実に暖かく良い天気で2016年の朝を迎えました。謹賀新年!
しばらくぶりにペンタングルのアルバム全6タイトルをじっくりと聴いています。
その中でも1968年の1stアルバム「THE PENTANGLE」は48年経った今でもメンバー5人によるその完成度の高さには他に誰もついていけなかった孤高のグループだったと改めて実感しました。
それはバート・ヤンシュとジョン・レンボーン2人の卓越したギター・テクニックといった意味だけではなく、彼ら5人のあの音楽性と編曲においての突出したセンス、ありていに言えばフォーク、ジャズ、トラッド、ブルース、古楽等がモダールな響きで融合された音楽なんて彼等以外では聴く事が出来なかったし、新しい年を迎えた今現在でも少しでもあのような音楽性を持つグループは世界中探しても見当たらないし、主要メンバーであったバート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンが逝ってしまい、彼等の祖国である英国からさえもペンタングル・サウンドの後継者、または影響された音楽を聴かせてくれるミュージシャンは出ていないように思います。
でも正直、僕と同様に彼等のファンにとってみればそれでいい、と思うところもあるのですが。
最初にペンタングルを聴いたのはLPレコードで(もちろんCDもMDもデジタルなんてまだ存在せずカセット・テープが全盛の1970年代)国内版のレーベルは東芝でレコード・ジャケットの中にはそのLPの収録曲の5人の楽譜が封入されていました。
これはオリジナルのトランスアトランスティック盤には付いていなくて日本人のどなたかが採譜したものかと思われます(もちろん当時のギター譜にはTAB譜は付いていなくて全て音符でしたが、曲中の数箇所はアドリブと明記され採譜をしていなかったと覚えています)。当時ラジオのFM大阪で番組を持っていた男性三人のグループ〝一匹狼゛がライブでこの楽譜を見て演奏していたのを覚えています。
で、これは再プレス版で、その前に日本でのオリジナル版、つまり最初に出た国内版は確かキング・レコードからだったと思います。
40年ほど前に当時関西に居を構えて居た中川イサトさんのご自宅でそのオリジナル版を見せていただいたのですが、なんとペンタングルの各LPジャケットには五角形の切り抜きが施されたデザインでした。これが欲しくて…今でも、ですが…。
Dモダールの曲から始まるペンタングルの1Stアルバム「THE PENTANGLE」は18歳だった当時の僕に今尚多大な影響を与え続けているアルバムです。
-----広岡祐一・記/2016/01/02-----
PENTANGLE/Bruton Town(ブルートン・タウン)
2008年7月13日グラスゴー
7.No Love Is Sorrow/愛は哀しみではなく
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
John Renbourn:acoustic guitar
Jacqui McShee:vocal
Danny Thompson:double bass
Terry Cox:drums
バート・ヤンシュとダニー・トンプソンの共作のオリジナル・チューンで、他の英国のミュージシャンにも歌われている3分にも満たない傑作との評判高い曲。
(訳詩)
深い森の鳥の声のように わたしの賛美はあなたの耳には届かない
わたしの中に歌は聴こえないけれど あなたがそばにいれば それだけで幸せ
聞いておくれ 誰も口にしたことのない言葉で あなたを称えるから
心の中で大きな声を上げているのに いざとなると怯えて 何も言えなくなる
あなただけを愛している この胸に宿る愛を知るのはあなただけ
わたしはあなたに創られた けれども神は 心を開くことを許してはくれない
愛のない日々は悲しいけれど わたしは幸せ この世界にあなたがいる
そしてわたしの心はあなたのもの だからこの愛は鳥のように舞い上がる
空高く鳥のように舞い上がる
・・・・・・・・・・・・・・・・
と、自分の想いをなかなか伝えられないラブ・ソング。
この曲はジョンとバート共にアコースティック・ギターでの演奏で、ジョンのハーモニクスを入れたオブリガードが秀逸です。
8.Jump Baby Jump/ジャンプ・ベイビィ・ジャンプ
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
John Renbourn:acoustic guitar
Jacqui McShee:vocal
Danny Thompson:double bass
Terry Cox:drums
バートのギターとダニー・トンプソンの個性的なベースで始まる小気味の良いリズムの軽快なオリジナル・チューンで、アイルランド西端を旅していたバートとジョンの共作。
ジョンのオブリガードも思い切りグルーヴィで、このアルバムの中では最初は一番気に入った曲でした。
それにしてもジョンの弾くギブソンJ-50の枯れた音が最高です。
(訳詩)
ジャンプ、ジャンプ!翼を広げて飛んでいけ
あなたならきっと出来る 鷲のように舞い降りることも 波の上を飛ぶことも
だけど注意して 決して落ちないこと
船を追って 夢から覚めたあの人を追って
マストの周りを一巡して 船首を越えて太陽に向かって舞い上がれ
誰もあなたを捕らえることは出来ない
だけど注意して 決して落ちないように
息を止めてみて 深い海の中に潜り
銀色に輝くサメや厄介なウナギを掴め どの魚を選んでもいい
あなたにはなんだって掴める
だけど注意して 決して溺れないように
今あなたは200メートルの高さから 海を見下ろしている
足元の暖かな空を カモメが舞っている 波は岸辺に打ち寄せるけれども
どこにも行けはしない
だけど注意して 決して落ちないように
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こういった歌詞を日本語で歌にするのは難しいと思います。
9.Lady Of Carlisle/レディ・オブ・カーライル
Bert Jansch:banjo
John Renbourn:electric guitar & acoustic guitar & harmonica
Jacqui McShee:vocal
Danny Thompson:double bass
Terry Cox:drums & vocal
オリジナル・ペンタングルのオリジナル・アルバムの最後の曲は、ジャッキー・マクシーが1964年頃にロンドンのシンガーズ・クラブでペギー・シガーの歌を聴いてから歌いたかった伝承バラッド。
他にもジョーン・バエズなど多くのフォーク/トラッド・シンガー達の必ずレパートリー曲とされている有名な曲です。
ペンタングルの演奏はかなりブルージーにアレンジされ、ジョンのブルース・ハープもノリがよくかなりアメリカナイズされたような感じにも聴こえます。もちろん褒め言葉で、一度でも生での演奏を聴きたかった曲のひとつです。
以上でオリジナル・ペンタグルの全アルバム紹介は全て終えました。
ファンとしてまだまだ永遠に続いて欲しかった類まれなる「ワン・アンド・オンリー」なバンドでした。
Pentangleよ永遠なれ!
5.People On The Hightway/ハイウェイの人々
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
John Renbourn:acoustic guitar
Jacqui McShee:vocal
Danny Thompson:double bass
Terry Cox:drums & finger cymbals
友人達の新たな旅立ちを歌ったバート・ヤンシュのオリジナル作品で、本作がペンタングルのラスト・アルバムになることを予言していたような歌だと、ジョン・レンボーンとジャッキー・マクシーは感じ取っていたらしい。
この曲でもやはりバートの歌唱力が際立って聴こえます。ジャッキーの歌声はバートのサポートにまわりジョンのギターもどこか寂しげなフレーズ、そしてテリーのフィンガー・サイベルがまるでメトロノームのように聴こえます。
(訳詞抜粋)
ハイウエィにも人がいる
街にも人がいる
逃れることは出来ない
わたしは山に向かう
海沿いに進む
もうあなたは わたしに会うことはない
ここを離れる
面倒や不安を忘れ
安らげる場所を探さなくてはいけない
過去の事を全て忘れ
新しい人生を歩み始めればいい
愛は生きていく中で生まれ
愛は眠りの中に見るもの
消え去ってしまう前に
しっかりと掴むもの
ここを離れる
面倒や不安を忘れ
安らげる場所を探さなくてはいけない
…
6.Willy O'Winsbury/ウイリー・オウィンズベリィ
Bert Jansch:dulcimer
John Renbourn:acoustic guitar & recorder
Jacqui McShee:vocal
Danny Thompson:double bass
ドラムのテリー・コックス以外のメンバーで、バートはこの曲でもダルシマーを弾きジャッキーのさすがのボーカルが聴ける約7分のバラッド・チューン。
この曲はジョンのソロ・アルバム「ファロー・アニー」で先に録音されており、ペンタングルの演奏とギターはほぼ同じだと思われます。
ジョンの1978年、79年の来日時にもソロでこの曲を聴かせてくれました。この時は途中の歌詞とメロディを間違って歌い笑いながら演奏したのを覚えています。
(訳詩)
長い間 王はスペインに囚われていた
ウインズベリーのウイリーは城に残された王の娘と寝ていた
「娘よ ジャネットよ お前は病んでいるのか
醜い痛みでもあるのか それとも男と寝たのか?」
「病気ではないし痛みもない 男と寝たわけでもない
長くスペインにいたあなたのことが 気掛かりだっただけ」
「着ているものをすぐに脱いで 裸でわたしの前に立て
お前が処女か もうそうでもないのか すぐにわかるように」
娘は着衣を取り 王の前に裸で立った
娘の腰は丸みを帯び 顔色は蒼ざめていた
「お前の相手は身分の高い者か 家柄の良い者か
それともスペインにやって来た召使いの一人か」
「身分の高い者でも家柄の良い者でもない
わたしの選んだ人はウインズベリーのウイリー」
王は33人の兵を集め 彼らに命じた
「ウインズベリーのウイリーを連れ帰れ その者は今夜 絞首刑に処す」
王の前に現れたウインズベリーのウイリーは
赤いシルクの服を着ていた
髪はまるで金の糸
肌は雪のように白かった
王は言った
「娘がお前に恋をしても不思議はない
もしも女だったら わたしもお前を選ぶだろう」
「お前は誓えるか ジャネットと結婚すると
もしも誓うなら わたしはお前にわたしの土地をすべて譲ろう」
「誓いましょう わたしはあなたの娘ジャネットと結婚する
けれどわたしはジャネットのほかに何もいらない」
ジャネットを白い馬に乗せ
ウインズベリーのウイリーは灰色の馬に跨いだ
彼女が与えられたのは 一日かけても周りきれない広大な土地」
・・・・・・・・・
このような訳詩でもわかり易く、それに珍しくハッピィ・エンドなバラッド・チューン。
解説の白石氏によると「彼らはアン・ブリッグスの歌で覚えたと言うが、元を辿れば60年代にアンディ・アーバインがトラディショナル・ソングの歌詞とメロディの組み合わせを間違って…つまり異なる2曲の歌詞とメロディを付けてしまいスウィニーズ・メンで歌ったバージョンが広く定着してしまったものである」です。
古いバラッドにはよくあることで、もともと何百年昔から口承で伝わっている歌なので曲を混同したり、歌詞の一部を別の曲に入れてしまう事などがあるようです。
そのため一つの曲に数バージョンが存在していたり、その時代によってそぐわない歌詞を書き換えたりと…。
(to 49)
☆☆☆☆☆
*今年の冬は何年かぶりに寒い。夏が猛暑の次の冬は寒くなる?
それに去年の猛暑のせいでそろそろ花粉が例年以上に多い量で飛散してくるようです。
現在まではまだ花粉症になっていないけど、今回のははたして無事なのか不安になります。
*先日、火も煙もないたばこ「無煙たばこ ZERO STYLE」てのを買いました。
ま、値上げもしたことだし体にも悪い、吸わない人にも複流煙で迷惑もおかけする極悪なたばこを止めればいいのですが、一度ご参考にと買って試してみました。
プラスチックの小さなパイプの中にたばこの葉が詰まったカートリッジを入れて吸う…方式です。
昔売っていた(今もか?)“禁煙パイポ”と同じようなモノですが、多少のたばこの味はします。ただ本物の(?)の火を点けて煙を吸うたばこは一旦肺に入れて吐き出しますが、この“煙を吐き出す”所作がありません。
もともと火も使わないし煙もありませんので。
これが慣れるまでまどろっこしいわ!
ノン・アルコールのビールを飲んで本物のビールがよけいに飲みたくなった!と同じような現象です。
ま、止めればいい、だけの話ですけど。
3.The Snows/ザ・スノウズ
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
John Renbourn:sital & reicorder
Terry Cox:drums
Danny Thompson:double bass
ジャッキー・マクシー以外のメンバーで牧歌的な味わいのある、そしてバート・ヤンシュの長く唄い続けている渋いボーカルをメインにしたトラッド。
ここでもジョン・レンボーンのシタールが西洋音階に全く違和感のないメロディに溶け込んだ演奏とリコーダーを聴く事が出来ます。
全く派手さのない落ち着いた淡々とした曲で古楽/ブリティッシュ・フォークに精通している音楽評論家である白石和良さんのライナーによると「アーチー・フィッシャー、アン・ブリッグスの歌唱から覚えたというトラッド・ソングで、メロディは英最北部のノーザン・バーランド地方の古いバグパイプ・チューン“My Lovs Is Newly Listed”に基くもの」とジョンとジャッキーは考えているようです。
(訳詞)
風が吹き始めれば雪も早く解ける 霜が降ればトウモロコシの成熟が早まる
わたしのことなど忘れてしまうと言っている女はきっと着いて来る
風が吹き始めれば雪も早く解ける 春の間ツバメは楽しげに空を舞う
しかし春が去り冬が訪れると 言葉とは裏腹に彼女はあの荒れた海をわたしと渡る
風が吹き始めれば雪も早く解ける 夏に陽を浴びて飛んでいった蜜蜂も
冬になれば誰かを刺す事はできない 夜を過ごす内に怒りを忘れた女を知っている
女に嫌われてもその気持ちを変えるのは難しいことではない
だから別れを口にすることはない わたしはどこにも行かないから
このままここにいてキスをして立ち去ればいい ヤマシギが鳴くまで ツバメが飛び去るまで
わたしはここで待っている 風が吹き始めれば雪も早く解ける
4.Hight Germany/高地ドイツ
Bert Jansch:banjo & acoustic guitar
John Renbourn:elctric guitar & recorder
Jacqui McShee:vocal
Danny Thompson:double bass
Terry Cox:hand drums
この曲を初めて聴いた時、多分誰でも日本の民謡?と思ってしまうようなメロディを唄っています。
バートのバンジョーがどこか三味線の音色に、ジョンの吹くリコーダーは日本の祭りなどの横笛に聴こえる、日本人にはどことなく馴染みのある聞覚えのある曲です。
ジョンはここではリコーダーとセミアコをこれもまた三味線風(?)なオブリガード、バートはバンジョーとアコースティック・ギターのオーヴァー・ダビングしていますがギターはドローン風に弾いてジャッキーのボーカルをサポートしています。
(to 48)
☆☆☆☆☆
*今日は朝からなんだか静かな気がしていたら「成人の日」で祝日でした。
二十歳になったお祝いはわかりますが、なんで祝日にするのかよくわかりませんが「聖人の日」なら、なんとなくカッコええとフッと思う。
わたくしの役所主催の成人式の日には他の地区の式のステージに招かれました。
「今日から皆さんは20歳、どうか社会人としてりっぱにがんばって下さい!」とかなんとかえらそうなあいさつをした後にBluesを弾いていました。
*昨夜は久し振りに大阪中央区のblues bar「slow hand」でライブでした。次回は3月に出る予定になりましたが、マスターのアイデアで、何曲を演奏した後に興味ある人にレクチャーを、と。
やはりブルースと言えばギター弾きの人が多く、この店の常連さんの中にもギターを強いている方が多いのでおもしろいかもわかりません。それに僕自身もライブ用のレパートリーもまだまだ多くないので。
ブルース以外の曲もありますが、店の雰囲気、その店に来るお客さんにあまり合わないようだと演奏しないのでこれはいい考えです。
『SOLOMON'S SEAL/ソロモンの封印』
1972年の9月にリプリーズよりリリースされたペンタングルの最後の6枚目のアルバム『Solomon's Seal』は前回のブログに書いたように最初に聴いた時はなんだか地味な音作りに思えました。
でもそれが何度も針を落しているうちに(この表現、今では死語なのでしょうか?)、なんと味わい深い、さすがペンタングル・サウンド!と今ではお気に入りのアルバムです。もっとも6枚全てがお気に入りではありますが、とくに2曲目の「The Cherry Tree Carol」がなんとも最高!
(曲目紹介)
1.Sally Free And Easy/サリー・フリー・アンド・イージィ
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
Jacqui McShee:vocal
John Renbourn:electric guitar
Terry Cox:drums
Danny Thompson:double bass
ダニー・トンプソンの印象的なダブル・ベースの響きから始まるこの曲は、元英国海軍出身のシリル・トーニーの作品で、「サリー」は理想の女性を擬人化した名前で、船乗り達彼らの心情を綴った曲。
バート・ヤンシュの何年もの間歌い続けている枯れたボーカルとセイレーンを想わせるジャッキー・マクシーのコーラス。そしてリラックスしたオブリガードをセミアコで淡々と弾くジョン。
---(訳詞)----
呑気なサリー それが彼女の名前 呑気なサリー 彼女にはお似合いの名前
船乗りの愛も 彼女にとってはただのゲーム
彼女の愛は石のように冷たい愛ではなかった 彼女の愛は石のように冷たい愛ではなかった
彼女は蜂の巣のように甘く 空虚だった
日没を待って 旗が降りるのを見に行こう 日没を待って 旗が降りるのを見に行こう
そして潮の流れに沿って 死に場所に向かおう
呑気なサリー それが彼女の名前 呑気なサリー 彼女にはお似合いの名前
わたしの体が大地に横たわる時 恥じを知るといい
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
と、やはり訳では分かりにくい歌詞に思えますが、リラックスした明るい曲調です。
2.The Cherry Tree Carol/チェリー・ツリー・キャロル
Jacqui McShee:vocal
Bert Jansch:acoustic guitar
John Renbourn:acoustic guitar
Terry Cox:hand drums
Danny Thompson:double bass
「Joseph And Mary」(ヨセフ・アンド・マリー)のタイトルとして“偽マタイ伝”の中の一節を唄っており、ペンタングルの他の曲にもみられる変拍子を用いた曲で、米国の伝説のトラッド歌手ジーン・リッチやメリー・ホプキンス等の録音も残っている大変よく知られている曲です。
ペンタングルのアレンジは、後に発売されたCDにも英BBCラジオ放送の番組のために録音されたトラックもこの曲が収録され最高の演奏を聴く事が出来ます。曲中でのジョンのソロ・パートはこのアルバムやラジオ録りでもオーバー・ダビングされ、これぞアコースティック・ギターの音色と呼べる至高の演奏です!
---(訳詞)----
ヨセフとマリアは果樹園を歩き 美しい苺やチェリーを見た
森を歩くヨセフとマリアは 血のように赤い苺やベリーを見た
マリアは優しい声で言った
「チェリーをひとつ摘んで下さい お腹に子供がいるわたしには取る事が出来ない」
ヨセフは冷たく返した 「あなたを妊娠させた男に頼めばいい」
その時母の胎内にいた子供が言った
「背の高い樹よ 屈んでおくれ わたしの母が実を手に取れるように」
桜の樹は屈み 彼の母の手元に実を差し出した
マリアは叫んだ
「ごらんヨセフ 私は好きなだけチェリーを食べられるわ」
マリアは血のように赤いチェリーを抱え家まで運んで行った
家に着くとひざまつき お腹の子に尋ねた
「教えておくれ この世界はこれからどうなるのか」
「僕は死に冷たい石のようになります あらゆるものが わたしの死を嘆くでしょう
イースターにはわたしは復活します
この世界のすべてを動かすのはわたしなのだから」
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
もちろんこのお腹の子供はイエスのことです。
とにかくこの美しい旋律を持ったペンタングルの演奏は最高です。
(to 47)
☆☆☆☆☆
≪Live告知≫
今年は久しく活動していなかったライブ演奏を増やそうと思っています。
もちろん大きなライブ・ハウスでやっても集客は無理ですので、アコースティック・ギターの生音が聴こえる小さなBarスタイルの店を中心に、と。よろしければ聴きに来て下さい!
*day & time:1月9日(日)20時~
*at:ブルース・バー『Slow hand』(スロー・ハンド)
詳しくは↓
http://r.gnavi.co.jp/ka9f400/
前回(43)の5.Rain and Snow、6.So Clearと書きましたが5.Rain and Snowの次の6曲目はHelpng Handで7曲目がSo Clearでした。すまん。
6.Helping Hand/ヘルピング・ハンド
ドラムのテリー・コックスのオリジナルを全員でアレンジされた変拍子の曲です。
ペンタングルのメンバーの中で曲を主に作るのはバートとジョンですが、このテリーの曲も多く、またヴォーカルにも積極的に参加して殆ど歌わないのはダニーくらいです。
この曲もペンタングルらしいブルース色の濃い曲ですが、やはり1st等の収録曲と比べていまひとつ切れが悪い…と言うか緊張感があまり感じないように思います。もちろん僕個人の感想なのですが、その原因のひとつはこのアルバムではジョンがアコースティック・ギターを前面に出していなくてセミアコのエレクトリック・ギターを弾いているからだと思います。
もちろんそれが悪いと言う訳ではありませんが、“エレクトリック・トラッド”グループのフェアポート・コンベションとはやはり一線を画しているグループなのでアコースティックでガンガン弾いて欲しかった。
とは言えペンタングルは 解散した後も“One and Only”!
8.Reflection/リフレクション
(7曲目がSo Clearです)
アルバム最後のタイトル曲でステージではアドリブをガンガン加えた定番曲。
バート・ヤンシュのオリジナル・ソロ・ギターであるインスト・チューン「Joint Control」をもとにやはり全員でアレンジした曲で、非常に印象的な(カッコ良い!)ダニー・トンプソンのベースをオーバー・ダビングして作られたイントロから始まります。
メンバー全員で作曲中にメロディ・ラインが出来た時に、ジャッキー・マクシーによる作詞が思っていたより長い歌詞になり8分以上の長尺な曲として完成したそうです。
ペンタングルの中でも数曲ある拍子が変化する曲で、ブリッジではジョンのセミアコとハーモニカ(ブルース・ハープ)、そしてテリーのドラムもアドリブ演奏されて全体的に“インスト曲に歌詞がある”ような1stの「Pentangling」同様の雰囲気を持った曲。
ただ僕個人としてはやはりジョンはアコースティック・ギターで“暴れて”欲しかった!と思います。
さあ、残念な事に次の6thアルバムがペンタングルとして最後のアルバムになります。
( to 45)
☆☆☆☆☆
*わたくしは何度かこのブログで書いているアメリカのTVドラマのファンで、殆どはDVDをレンタルして観ていますが、お気に入りの作品だけは購入しています。
その購入しているタイトルはアメリカ大統領とその側近達の日頃の奮闘をストーリーにしている「ザ・ホワイトハウス」で放映はすでに終了しています。この作品を何気なく見た時にそれまで全く興味のなかったアメリカTVドラマのおもしろさにハマったのですが、そのおかげで他にもいろいろと見てしまいえらい事です。
*DVDはドラマ以外にはやはり音楽モンを多く持っています。最近買った中ではルネサンス~バロック音楽時代の楽器を各演奏家によって紹介している作品。チェンバロ、バージナル、ルネサンス・リュート、バロック・リュート、この時代の各吹奏楽器、バロック・オルガン等などの古楽器を丁寧な解説と短い演奏で現代の楽器との音色の違いなどが見れます。他にももちろんジャズ、ブルース関連のDVDもテンコ盛りです。
さあ、今年も明日31日で終了。
5.Rain And Snow/雨と雪
Bert Jansch:banjo & piano
John Renbourn:sitar
Jacqui McShee:vocal
Terry Cox:drum & vocal & tamblin
Danny Thompson:double bass
4thアルバム「Basket of Light」の雰囲気を持ったアパラチア地方に残っている伝承曲で、大変テンポの良い、日本人が聴くと馴染みのあるメロディを持った曲で彼らのステージでの定番曲です。
この曲でバート・ヤンシュはアルバム初のピアノを聴かせてくれています。後に出た彼の全曲がインスト・チューンのソロ・アルバム「アボゼット」でも数曲をピアノを弾いていますが、当時はバートがピアノを弾けるとは知らなかったので誰が弾いているのか?とファンの間で話題になりました。
~Rain And Snow~ (訳詞)
追い出された 冷たい雨と雪の中に
私の選んだ妻は 苦しみしか与えてくれない
私を冷たい雨と雪の中に追いやった
雨と雪 雨と雪
私を冷たい雨と雪の中に追いやった
彼女は階段を駆け下りてきた 長い金髪を後に流して
頬はバラのように赤かった バラのように赤かった
頬はバラのように赤かった
彼女は部屋に入り 運命を決めた
「もうあなたとはやっていけない あなたとは あなたとは」
彼女は言った「もうあなたとは やっていけない」
「わたしの欲しいものを あたなは与えようとしない
こんな扱いにはもう耐えられない このままでは このままでは
わたしはもう耐えられない」
*「わたしが稼いだお金を こっそりと数えるのを見た
わたしには食べるものもない 食べるものもない それを買うお金もない
食べるものもない それを買うお金もない」
*くり返し
追い出された 冷たい雨と雪の中に
・・・・・・・・・
なんか夫婦間のトラブルのようです。
他のバラッドとおなじく詳しい描写、具体的な言葉を歌詞に載っていませんが、この旦那、この後が気になります。
6.So Clear/ソー・クリア
John Renbourn:acoustic guitar & electric guitar & vocal
Bert Jansch:piano
Danny Thompson:dublebass
ジョン・レンボーンのオリジナルの弾語り曲。
大変美しい旋律と韻を踏んだ歌詞、メンバーのジャッキーもお気に入りで間違いなく名曲。
ジョンの1979年の2回目の単独来日時に大阪の南御堂会館のステージでこの曲を聴きました。
もちろんジョンのソロですが、最高の演奏でした!
<ジャッキーの証言>
「このアルバムのどの曲も好きだったけれど、ジョンのSo Clearは特にお気に入りだった。彼はダニーとバートの2人と一緒に納得がゆくまで何度も繰り返しあの曲を演奏していた。ジョンはめったに歌詞を書かなかったけれど、あれはまさに彼の曲だった・・・」
~So Clear~ (訳詞)
雨の季節に あなたは汽車を待っていた
昼 発ったあなたは まだ独りぼっちだった
あなたにはわかっているのだろうか どうしてこうなったのか説明出来るのだろうか
旅行鞄を持った悲しい女はただこう言った いつだって起りえる事が起きたに過ぎないと
サーカスの騎手 トゥールーズ 無邪気に笑って
輝きを失うことなく 陽が昇るまで走り続けて
あなたの瞳は星のように輝いている
誰のせいにもすることも出来ず 誰にも話せない悲しい物語が
雨とともにあなたに降り落ちてくるだろう
あなたの美しい歌が聴こえると 言葉を失ってしまう
彼女の髪に月が映ったなら つらい孤独は消え去り
そこに何かを見つけるだろう
誰にも語られていないことを 今もひとつ覚えている
ほんの少し歪んだガラスの心が あなたを守っている
海岸にもハイウェイにも あなたの名前を知る者はいない
何もかわっていないのは不思議なこと けれどあなたにはわかっている
本当に変わってしまうものなど何もないと
・・・・・・・・
やはり訳詞では哲学的な詩のようになりますが…。
この曲ではジョンの歌声とアコースティック・ギター、そしてセミアコをオーバー・ダビングで弾いていますが、この曲で初めてマーチンを使用しています。あとにも先にもペンタングルでもソロでもこの1曲だけです。
品番は…確か…Dの…Dの…あまり見ない品番で……わ、わすれた。
( to 44)
☆☆☆☆☆
*ジョン・レンボーンの1978年にステファン・グロスマンとの初来日の翌年79年のライブはほとんど全部聴きに行きました。関西では最初に京都のライブ・ハウスで2回、その後大阪では南御堂会館のコンサート・ホールでの演奏でしたがこの2回の京都ライブは客席とPAさんからラインをもらい録音しました。
大阪はライブ・ハウスでなくコンサート・ホールだったのと先の2回ライブの演奏した曲とは同じだろう、と思い録音機を持って行きませんでした。
この時はジョンが数曲を演奏した時に次の曲のためにチューニングを替えている最中になんと③弦がステージで切れました。どうするのかな?と思っていたら足元に用意してあった替弦の袋を破りほんの数秒で弦を張替えました。
おそらく1分も時間はかかっていない必殺の弦交換でした。
で、
弦を張り替えて突然演奏した曲が「So Clear」だったのです。
友人のギタリスト数人で隣同士の席にいた僕たちは、この曲が始まった瞬間「あ!?」「えっ?」「うっ!?」「な、なんと!」とか異口同音の叫び声を同時に発したのですが、この日の他の観客全員も多分同じアクションで「うわぁ~!」と驚いて一瞬心が通じたような良い雰囲気が漂いました。
3.Will The Circle Be Unbroken
Bert Jansch:acoustic guitar
Jacqui McShee:vocal
John Renbourn:acoustic guitar & electric acoustic guitar & harmonica
Terry Cox:drum & vocal
Danny Thompson:double bass
『永遠の絆』の邦題で有名なゴスペル・チューン。
世界中でいろいろな人がレパートリーとして歌っている曲で、歌詞やメロディもアレンジされいろいろなバージョンもあります。
このアルバムを買った時にジャケットでこの曲が収録されているの見た時はすごく意外な気がしました。
それはこの曲があまりにも有名で、僕のようなフォーク世代なら一度や二度は歌った事のある馴染みの曲だったのと、まさかペンタングルがレパートリーに取り上げていたとは思いも寄らなかったからです。
演奏はジョンのセミ・アコとハーモニカ(ブルース・ハープ)でブルージィにアレンジされ全体的にフラットな感じがしますが、ヨーロッパではこの曲をシングル・カットされ発売したほど人気があったようです。
4.When I Get Home
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
John Renbourn:electric acoustic guitar
Terry Cox:drum
Danny Thompson:double bass
バート・ヤンシュらしい個性的なオリジナルで、自信もソロで弾語りでステージでも歌っていた曲。
この曲、僕にとってそれほど何度も聴きたいと思いませんでした。
なんだかジョンが疲れているのか全体に“ノリ”がいまひとつ悪く、アドリブでもベンディングも不安定。
全体的なフレーズも安易にカントリー・ミュージックのような定番的フレーズな音に聴こえます。
ただこの時期のペンタングルは、それまでの超多忙な過密スケジュールに心身ともに疲れ切り、マネージャーやメンバーとの間に意思疎通な溝が出来てきた頃でもあるようですが…。
ただ、ダニー・トンプソンのベースはいつもの通り見事な演奏を聴かせてくれています。2010年現在は彼の息子さんと同じステージでがんばっているようです。
以上ここまでがオリジナルLPのA面です。
(to 43)
☆☆☆☆☆
25日のXmasの日からかなり冷え込んで来ました。このXmas、子供の頃はそれなりにクリスマス・プレゼントやケーキで盛り上がっていましたが(子供なので冬休みだし)、今は普通の日です。
欧米ではこの日こそ一年に一度の大イベントで家族中で盛り上がっているし、各企業もこの日一週間前後は完全に休みと聞いていますが、先日の新聞にイタリア発の記事によると「日本の完全に間違っているクリスマス」と載っていました。
まあ、
クリスチャンでもない多くの日本人はXmasの本当の意味を知らないのだ!とかだと思いますがほっとけよ。
この国は「神道」なのですが今の若い人達(最近の”若い人”とは35才あたりまでの一昔昔なら大人と呼ばれていた年齢の人達)は知らないし、もともと良くも悪くも宗教に無関心なのだからほっといて。
それに僕にとってXmasの嫌な思い出があります。
小学生の頃にクリスマスの日に親戚の家に遊びに行った時ですが、その親戚の家の前に小さなキリスト教会がありました。
その親戚もクリスチャンではないのですが、近所の親戚の子供と言う事なので一緒にクリスマスを祝おう!と神父さんがその教会の信者の子供らと中に一緒に招いてくれました。
そしてクリスマス・ケーキをみんなで食べよう!と神父さん自らが白い皿にケーキを乗せて子供達ひとりひとりに渡していくのですが、僕はパンでした。
ま、ワインももらえば納得しましたがね。
~PENTANGLE5thアルバム『REFLECTION/リフレクション』~
ペンタングルが残した傑作に数え上げられているこの5枚目のアルバムは、彼らの初めての16トラック・マルチ・レコーダーを使用され1971年に発売されました。
当時新譜としてこのLPを買った時は、アルバムのジャケットを何時間も眺めていたのを覚えています。
その理由は、1枚ものには珍しくレコードの収納ケースが見開きタイプのゲートフォールド・スリーブ仕様で外側とケースの内側にはペンタングルのメンバーの写真で埋め尽くされていたからです。当時は(今も、ですが)バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンも他のメンバーの写真が音楽雑誌等に掲載される事がまずなかったのでファンにとっては大変喜びました。初めてバートやジョンの弾くギターの写真がはっきりと見れたのですから…!(これは現在のCDでは味わえない喜び!)
コンサート・ホールのステージでバート、ジョンが椅子に座りマイクの前で演奏している写真、ジョンがソロの1stアルバムを出した頃の写真、ボーカルのジャッキーが仲の良い夫と映っている、テリーがドラムのチューニングをしているシーン、ジョンがギターを膝に置き、右手で指人形を持っている、ロンドンの美術館のエントランスでのまるでモデルのようなジャッキーのポート・レート、メンバー全員が街中で陽光を浴びているシーン、レコーディング・スタジオで練習中のシーン、大型バイクにヘルメットを置き自分の子供を抱えたジョン・レンボーン…など等今眺めていても見飽きません。
1.Wedding Dress/ウェディング・ドレス
Bert Jansch:banjo
John Renbourn:acoustic guitar
Jacqui McShee:vocal
Terry Cox:drum & vocal
Danny Thompson:double bass
バート・ヤンシュのバンジョー(もちろんC&Wのような奏法とは違います)にジョン・レンボーンのアコースティック・ギター、そしてヴォーイング奏法(弓で弾く奏法)でダニー・トンプソンのベースが入りテリー・コックスが最初はハンド・ドラムでリズムをキープ、そしてジャッキー・マクシーの歌…。
ブリティッシュ・トラッド「Wedding Dress」はすでに本国英国では忘れ去られていたのをアメリカのアパラチア地方に伝承され残っていたトラッドです。
もともとアメリカ大陸は英国、アイルランド等のブリティッシュ圏内や各ヨーロッパからの移民の土地なので、アメリカにはブリティッシュ・トラッドが持ち込まれ、とくにアパラチア山脈に囲まれ外界と半ば遮断されていたこの地に多く残っています。その中でも有名な伝承曲。
Hey, my little bonni girl
Don't you guess better be making your wedding dress
Wedding dress, wedding dress
Better be making your wedding dress
(あと省略)
*可愛い人 あなたが縫っているのは結婚衣装
ウェディング・ドレス ウェディング・ドレス
ウェディング・ドレスを縫いといい
もう出来上がり
金の糸で縫われ ブラウンに飾られた
金の糸で縫われた 金の糸で縫われた
金の糸で縫われ ブラウンに飾られた
もう出来上がり
金の糸で縫われ 赤に飾られた
金の糸で縫われた 金の糸で縫われた
金の糸で縫われ 赤に飾られた
もう出来上がり
緑色に飾られた こんなに素敵なドレスは見た事がない
見た事のない 見た事のない
こんなに素敵なドレスは見た事がない
もう出来上がり
純白に飾られたドレスで土曜日の夜に結婚式を挙げる
土曜日の夜 土曜日の夜
土曜日の夜に結婚式を挙げる
肯定することも 否定することもなく
彼女はただ黙って縫い続けていた
黙って縫い続けていた
ただ黙って縫い続けていた
*(繰り返し)
と、以上がこの歌の訳詞なのですが、非常に覚えやすいメロディと歌詞。
これは多くのトラッドにみられる言葉の無駄を排し、事細かく情況描写や説明等の言葉を歌詞に入れていないパターンです。
この土曜の夜に結婚式を向かえそのために結婚衣装を縫っている彼女の胸中は?
はたして幸せな結婚なのか?
これは聴いているものに委ねているように思えます。
そして単純なメロディと同じ単語のくり返すこのようなトラッドにはダンスが伴っていたと思われます。
もともと日本でも「かごめかごめ」や「はないちもんめ」等多くの童歌には踊りが付いている…というよりみんなで踊るための歌だったかもわからないように。
それはともかくこの曲は誰でも初めて聴いてもすぐに歌えるようなメロディと歌詞です。
(to 41)
☆☆☆☆☆