6日の産経新聞朝刊に哲学者の適菜 収(てきな おさむ)氏のコラム“「B層」グルメに群がる人”を読んで感じるものがありました。
サンケイ新聞のサイトから簡単に引用出来るのですが、僕の書くこの拙稚のブログはサポートしていなかったのでそのまま載せます。
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「賢者に学ぶ」 哲学者:適菜 収(てきな おさむ)
~「B層」グルメに群がる人~
先日国内最大規模のグルメサイト「食べログ」で、ランキングの不正操作が明らかになった。
複数の業者が特定の飲食店に対して好意的な口コミを投稿して報酬を得ていたのだ。
こうした消費者に宣伝と気づかれないような宣伝行為を「ステルスマーケティング」という。
これに対し「消費者の信頼を裏切るあるまじき行為だ」などと批判の声が上がったが、ナイーブすぎるのではないか。
わざわざ業者に依頼しなくても、店の関係者が自作自演でランキングを吊り上げているケースもある。
その結果、地元住民が首を傾げるような店に、ある日突然行列ができたりする。
インターネットの構造上、こうした問題は常に起こりうるはずだ。
しかしもっと大きな前提がある。
それは、口コミサイトの評論は「料理について細かい論評を述べたい人たち」「携帯電話で料理の写真を撮ることをためらわない人たち」が下した判断にすぎないということだ。
スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセット(1883~1956年)は、大衆を「凡庸であることを自覚すつつ、凡庸たることの権利を主張」し、圧倒的な自信の下、浅薄な価値観を社会に押し付けようとする存在と規定した。
彼らは「コストパフォーマンス」といった一面的な基準を振り回し、一流の店を貶め、三流の店を持ち上げる。
その結果、きちんとプロの仕事する鮨屋(すしや)が低い点数をつけられ、ロクでもない鮨屋(その実態は単なる海鮮居酒屋)が高得点をとるようになってきた。
こうした状況の中、隆盛を極めているのが≪B層グルメ≫である。
≪B層グルメ≫とは、平成17年の郵政選挙の際、内閣府から依頼された広告会社が作った概念で「マスメディアに踊らされた知的弱者」を指す。
彼らがこよなく愛し、行列をつくる店が≪B層グルメ≫だ。
いわゆる≪B級グルメ≫が「安くて旨いもの」であるのに対し、≪B層グルメ≫は必ずしも安いわけでも旨いわけでもない。しかし、≪B層≫は誘蛾(ゆうが)灯のように引き寄せられていく。
なぜなら≪B層グルメ≫は、行動心理学から動物学まで最新の知見を駆使し、≪B層≫の趣味嗜好・行動パターンを分析した上でつくられているからだ。
店の立地、席の配置、照明の角度がマーケティングにより決定され、さらに「産地直送」「期間限定」「有機栽培」「長期熟成」「秘伝」「匠の技」といった≪B層≫の琴線に触れるキーワードが組み合わされていく。
こうして、日本全国、駅前からデパートのグルメアーケードまで、同じようなチェーン店が並ぶようになってしまった。
「豚骨と鶏ガラ、魚介、30種類の野菜を3日間煮込んでスープをつくりました」みたいな闇鍋系ラーメン屋もこれにあたる。
「これが私の作品です」と一端の料理人のような顔をしている素人が増えている。
これはグルメだけの話ではない。
社会全体にB層的価値が蔓延し、それを資本が増幅させている。
その結果、
一流と三流、玄人と素人、あらゆる境界が失われてしまった。
こうした社会では素人が暴走する。
≪B層グルメ≫に行列をつくるような人々が「行列ができるタレント弁護士」を政界に送り込んだのもその一例ではないか。
(てきな おさむ)
-----引用終わり---------------------------------------------------------------
といった記事です。
これを読んで、決して食べ物だけの≪B層≫の話ではないな…と感じました。
--------------- 広岡祐一/2012年4月6日記 -------------------------
コメント
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