「ブリティッシュ・フォーク・ギタリストDavey Graham、John Renbourn、Bert Janschのギター・スタイル」
-Vol.4-
「採譜/耳コピ」について。
40年以上前から(LP時代のアルバムから)バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンそしてデイビー・グレアムの曲の採譜(耳コピです)を続けていますが、3人三様の左右の指使い、音の使い方、各音のポジションの取り方が大変勉強になります。
この中であえて比較的採譜がし易いと感じるのはジョン・レンボーンです。もちろんジョンの弾くギターが3人の中で一番簡単、難易度が低いと言う訳ではなく(もちろん!)スタジオで収録されている曲のひとつひとつの音がはっきりと聴き採れるからです。
それに演奏者が納得するまで録音をやり直しその中から選んだテイクをアルバムに収録しているので演奏時のミスが殆どありません。逆にライブ・アルバムではやはり録音時の音質や演奏時の思わぬミスがそのまま録音されるのでスタジオ録音よりは採譜に時間もかかる時もあります。
(アドリブ・パッセージ等で自分が納得いくまで録り直すのはロックやその他のジャンルでもLP時代から一般的に行われている編集方法で、最近はデジタル処理で不必要だと思うパッセージを切り取ったり、逆に繋げたり順番を換えたり、または収録時間に合わせるために曲のテンポをデジタルで調整しているCDもあります)
デイビーはあまり気にしない性格なのか、リズムの乱れや瞬間的にミス・トーンが入ってしまってもそのままをアルバムに収録され、バート・ヤンシュはインストが多くないためかスタジオ録音のアルバムではそれほど目立つミスはないと思います。ただライブでは歌詞を時々忘れるのが愛嬌ですが。
採譜する時、フィンガー・ピッキング奏法の場合はクラシック・ギター同様にシングル・ノート以外では2声、3声での発音が中心になるので各ポジションが非常に大事になります。ベース・ノートなどの音符の長さを考えなければポジションを見誤ります。例えば④弦開放のDか⑤弦5fか、メロディ・ラインなどでも③弦5fか④弦10fのCか、③弦の9fなのか②弦5fのEか①弦の開放なのか等をよく聴き取って採譜しなければ「採譜/耳コピ」でなくただ「似た曲」になってしまいます。
ただし同じ楽譜上の音符も数ポジションで発音出来る場合もありそういった場合は弦によっての音質の違いでどちらのポジションかを聴き分けます。(①②弦のストレート弦と③弦から巻弦の音質の違いなどです。そう言えば今も製造しているのか知りませんがギブソンからアコースティック・ギター用の「スーパー・ライト・ゲージ」の商品名で③弦もストレート仕様の弦もありました)
それでもどちらのポジションか迷う時には本人に確かめてもらう以外にありません(70年代に知り合ったロック・ギタリストの友人は採譜した楽譜をイギリスやアメリカの本人に送ってチェックしてもらっているのを思い出しました)が演奏している本人に直接尋ねると「どっちでもええよ」と言う答えが案外多く返って来ます。
3人(以外にも多くのギタリストも)が弾く曲で共通するタイトルに「Anji」があります。作曲がデイビー・グレアムのこの曲が話題になり多くのミュージシャンが自分のレパートリーにしたきっかけはバート・ヤンシュの1stに収録されているバージョンですが、作った本人のデイビーが弾くオリジナルは落ち着いたジャージーな雰囲気がありアドリブのパッセージは殆ど入れていません。
バートはラスゲアード(フラメンコの小指からでなく人差し指からの)やブリッジにジャズの「Work Song」を加え、ベンドも半音を上げ全体的にアドリブでのバージョンにアレンジして迫力のある演奏になっています。
ジョンの演奏はオリジナルに近く彼の1stに収録されている「Judy」との組み曲風にアレンジしていますが一番速いテンポでさらり(?)と軽く聴かせてくれます。3人それぞれの個性が見られる「Anji」ですが作曲者のデイビー本人はどうやらバートの弾き方は「あまり好きじゃない」とのことです。
ここまで僕の感じた3人のギター・スタイルを書いてきましたが「デイビーはこんな感じで、ジョンはこの音を入れ、バートはこう弾く」とかを目の前でギターを弾きながら伝える事が出来ればもっと具体的に分かり易くなったのですが文章力もなく語彙も少ないので文字では難しい!
----------広岡祐一/2013/10/23記----------
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