「ブリティッシュ・フォーク・ギタリストDavey Graham、John Renbourn、Bert Janschのギター・スタイル」
-Vol.3-
右手の指の使い方は、ジョンは一般的なアコースティック・ギタリスト同様にシングル・ノートを弾く時には②弦、③弦にも親指を用いていますがデイビーの場合、クラシックやフラメンコのように人差し指と中指または薬指でトレモノ奏法も使っています。左手はジョン、バートも親指で⑥弦を押さえるスタイルをよく見られますがデイビーはギターをクラシック、またはフラメンコ・ギターもよく使用するので意外とこれは使わないです。ジャンル的には3人共通はトラッド、ブルース、ジャズ、ルネサンスおよびバロック・ミュージックで、ジョンとバートは弾いていなくてデイビーで聴けるのは中東アジア圏の民族音楽、ボサ・ノヴァ、フラメンコあたりではないでしょうか。
3人の中で唯一サム・ピックを付けたバート・ヤンシュの場合、1stアルバムに「Smokey River」などジャズをアレンジしたインストも初期にはありますが、やはり何といってもボーカル曲で秀逸なギター・プレイを聴く事が出来ると思います。とくに2枚の名盤「Rosemary Lane」と「Moonshine」での絶妙なギターとそのアレンジには圧倒され、とくに「Moonshine」に収録されている「Yarrow」やアルバム・タイトルになっている同名曲「Moonshine」(バートのオリジナル曲)はバート・ヤンシュの非凡な個性が充分に発揮されトラッドに対してその造詣の深さにはジョンとデイビーの2人をも凌いでいると思います。
このバートの具体的な奏法は一般的にアコースティック・ギターで使用されるオープン・コードを多く使いますが、フォームから離れて④⑤⑥弦の5フレット~9フレットのポジションに歌いながら頻繁に指を移動させながらメロディをよく入れています。それに後年では少し鳴りを潜めたあの右手指でバチバチ!と弦を思い切り弾くヒステリックなスナピッング奏法(?) がなんともかっこいい!これはテクニック云々を解説する奏法ではないのですが、ジョンがバートと出会った頃にはしばらくこの弾き方に影響されたのか同じように弦を思い切り弾(はじ)いていました。(出来ればその時代のBert & Johnの演奏を生で観たかった!残念無念後悔懺悔!)
これは欧米などのライブでは観客が結構大きな声でおしゃべりをしながら演奏を聴いているのでバート自身が自分の弾くギターの音を聴くためにこのような弾き方になったようです。今のようにピック・アップを付けてPAから音を出すのでなくマイクを使っていた時代なので確かに返りのモニターがない会場では自分の弾くギターの音が非常に聴こえ難いです。それにデイビーの60~70年代のライブCDを聴くと会場によっては演奏中に客は平気でよくおしゃべりをしています。(信じられん!Oh! My god! です)
でも海外のミュージシャンが初来日し演奏後によく「みんな静かに聴き過ぎて緊張した」と感想を言っているのもよく聞き、ステファン・グロスマンも初来日した時にも同じ事を言っていました。
(で、「もっとエキサイティングなステージにするために来年は友人を連れてくるよ。英国では有名な元ペンタングルのジョン・レンボーンというギタリストだよ」と言ったのを覚えています。ジョン自身も日本では全くの無名だと思っていたのが初来日した時にファンが多くて驚いた様子でした)
ボーカル曲についてはジョン・レンボーン、デイビー・グレアムもメロディ・ラインを加えながら歌っていますが、デイビーはブロック・コード的なバッキングを小気味よく使ってグルービー感を出しています。このスタイルのバッキングはジョンとバートでは聴いたことがありません。
あとチューニングではバート、ジョン、デイビーともレギュラーを中心に弾きますが、バートはドロップ・DとDモダール・チューニング(世間で言うところのDADGAD)位でそれほど頻繁には変えていません。ジョンはデイビー同様にオリジナルの変則チューニングを3人の中ではアルバムには多く使用していますが、ライブではデイビー同様にレギュラー・チューニング中心の曲で組み立てしているのが多いです。
----------広岡祐一/2013/10/22記----------
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