18世紀前半から後半にかけてロココ様式が一世を風靡していた頃の、フランスの音楽
作品には譜面通りに演奏してはいけない場合が多いそうです。
踊る太陽王ルイ14世のもとで活躍していたクラヴサンの名手フランソワ・クープランが
1716年に出版した教則本『クラヴサン奏法』に、
「我々フランス人は演奏通りに記譜しない。
外国人がフランスの音楽を演奏する場合、我々が外国の音楽を演奏するほど
にうまく演奏出来ない理由はそのためである。
これに対してイタリア人たちは、頭に浮かんだそのままをそっくり楽譜に写す」
と説明している一文があるそうです。
もともとバロック期時代には装飾音等は演奏者が自由に即興的に演奏するのが常識で
あるのが一般的ですが、これらとは別に『イネガル』と呼ぶ演奏技法もありました。
この『イネガル』は『不均等』の意味で、
「8分音符の連続が音階的に動く時は、付点音符のようなリズムで演奏する。
しかし楽譜には全て同じ音価の音符を記譜する」
と説明されているそうです。
この演奏技法はジャズにかなり似ていると思われます。
フレーズ上で8分音符が続く時にイーブンで弾くのでなくてシャッフルに近く、少し跳ねる
リズムで演奏する。ただしあくまでも「8分音符が音階的に動く」パッセージの時にですが、
音符のひとつ置きにアクセントを付けてテヌート気味に弾くと自然に付点リズム風な演奏に
なりこれを「イネガル」と呼ぶ演奏技法です。
このような演奏が17世紀中頃から18世紀にかけて一般に行われていたそうです。
*僕の敬愛する金澤正剛氏の“古楽のすすめ”から参照させていただいています。
*『ロココ様式』とは、美術等にも使われている様式名で「ロカイユ」…“岩”が語源です。
音楽的には装飾音符を多用して軽快、優美、繊細な様式でバロック後期から古典派
まで続き、『ギャラント』様式の別名もあります。
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