初めてバート・ヤンシュを聴いた時、きっと誰もが同じ思いを持ったのではないでしょうか。
「弦をバシバシ弾いている!」と。
この“スナッピング奏法”は彼のかなり前のインタビュー記事に、
「ライブ・ハウスで唄っている時、ステージでの自分の弾くギターの音をもっと大きな音で聴こうと思いあんな弾き方になったんだ」
とありました。
今のような高性能なギター用のピック・アップもなく、ステージでの演奏時にはマイクで音を拾っていた時代なのですが、この“バシッ!”と弾くヒステリックな奏法がバートの持ち味になっているのは間違いないと思います。
ジョン・レンボーンとのグループ“PENTANGLE”の1stの録音では、この奏法で弾くバートとジョンの弾くギターの音量の差でレコーディング・エンジニアはかなり苦労したようです。(もちろんバートの弾くギターはレベル・メーターの針が振り切れる程の音量なのでバランスが録り難くかった、と)
バート初来日の時は「弾くかな?」と変な期待をして聴きました(もちろんバシバシッ!)。
彼が10代の頃の苗木を育てる仕事に就いていた時、暇な時間にはバンジョーでの弾語りをしていたようです。
1940~50年代当時には英国ではギターよりバンジョーでの弾語りはごく普通のスタイルで、その時に身に付けたバンジョーの奏法をギターでも用いている曲も多く聴く事が出来ます。
初期のソロLPにもバンジョーでの弾語り(もちろんC&W、マウンテン・ミュージックではなくブリティッシュ・トラッドの弾語り、です)が聴けるし、PENTANGLEではバンジョーとジョンのシタールとの共演も数曲あり、あとピアノも弾いています。
ジョン・レンボーン程のギタリスト色は強くなかったと思いますが、全曲をインストで収めたアルバムも1枚出しています。
しかしバートらしさの魅力はなんと言ってもあの歌声、個性ある唄い方ではないでしょうか。
気負わずに淡々と唄うボーカルとしての実力はかなり多くのミュージシャンが認めています。
それに初来日の時にかなりの声量があるのがわかりました。
一時、彼のデビュー・アルバムを制作発売していた英国トランス・アトランティックでは、バートをドノバンのように売りたいと考え、アルバムではエレキ・ギターを持たせ、バックにはブラス編成のバンドを付けて録音した曲が数曲あります。
しかしエレキ・ギターを持ってもサム・ピックを付けてアコースティック・ギター同様の“バシバシ!”の弾き方なのでなんか不思議なサウンドに仕上がっていますが。
あとPENTANGLE解散後、ジョンとも距離を置いていた時に出したアルバムにはエルビス・プレスリーの曲も唄っています。
彼を敬愛しているニール・ヤング曰く、
「バート・ヤンシュはアコースティック・ギターを持ったジミー・ヘンドリックスだ! それに僕の尊敬するギタリストはクラシックのナルシソ・イエペスと彼バートなんだ」と。
天国に逝っても向こうでバシバシ!弾いて下さい!!
敬愛なる師匠BERT JANSCH お疲れ様でした!!!!!!!!!!
---------広岡祐一(2011年10月16日記)------------------------------
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