「ブリティッシュ・フォーク・ギタリストDavey Graham、John Renbourn、Bert Janschのギター・スタイル」
-Vol.2-
具体的に演奏時の各スタイルを比較してみると…、
ジョンやデイビーのインスト・チューンでは、ジャズ等のスタイルによくある定番パターン「テーマ~アドリブ~テーマ」が使われますが各パッセージには違いが聴けます。バートの場合はこの2人のようなインスト・チューンが少ないのが残念で初期のアルバムでも殆ど聴けませんでしたが、これは本人があまり関心がないのとギタリストとしてよりトラッド・シンガーとしての活動が中心だったからと思います。
ジョンのアドリブでのパッセージではブルース進行を基本に常にベースとして親指でコードのルート音を中心にリズムとコード感を出しています。もちろんこの奏法はロバート・ジョンソンやビッグ・ビル・ブルージ、ライトニング・ホプキンスら今では古典的なカントリー・ブルースでも定番の奏法ですが、デイビーはテーマの和音進行に沿ってジャズ・ギタリストのような、例えばジョー・パスでよく聴けるパターン、つまりベースを加えないシングル・ラインをよく弾いています。
(偉大なジャズ・ギタリストであるジョー・パスは大好きなギタリストですが、ギター・ソロ…昔風に言えば「リード・ギター」がソロで突然入るのがあまり好きになれなくて「ここもベース音を加えながら弾いてくれよ」とよく思いました。でもあれだけコード感たっぷりに埋めるとベースを入れることは必要ないですが)
フレーズ的にはジョンはブルーノート、ペンタトニック、ドリアンとリディアン・スケールを中心に展開し(トラッド系ではよりモダールに)、デイビーはジャズ・チューンをアレンジした曲が多いので各パッセージにもジャズでは定番のモード・スケールを使っているのが多く、それにあまりジョンでは見られない左手はジャズでのソロ・スタイルのセーハ・フォームのコードを押さえて中指、薬指、小指でアドリブのパッセージを加えるパターンもよくみられます。
オリジナルがジャズ・チューンだけをみるとデイビーのほうがジョンより多くライブ等のレパートリーに加えていますが、ジョンはジャズ・チューンのアレンジでも根底ではブリティッシュ・フォークとして(もちろん本人にはそのような意識はないと思いますが)、デイビーはやはりジャズ・ミュージックとして弾いているように聴こえます。ただし完全なジャズとしての演奏ではなくやはり英国のブリティッシュ・フォーク・ギタリストとしてのプレイが異彩を放っており、もしデイビーがジャズをジャズとして弾いていれば世界中に多くいる「大変上手いギタリスト」の中の一人であっただけかもわかりません。
----------広岡祐一/2013/10/21記----------
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。