「ブリティッシュ・フォーク・ギタリストDavey Graham、John Renbourn、Bert Janschのギター・スタイル」
-Vol.1-
3人の演奏スタイルの比較について書きたいと考えていました。ただクラシックのように同じ音楽家の同じ曲を演奏しているわけでもないのであくまでも僕の個人的な印象や感想程度です。(40年程彼らのギターを聴き続けているので少しは何か書けるのでは思っているのですが)
「楽譜の読み書きについて」は、
3人とも楽譜の読み書きは出来ます。ギタリストなのだから当たり前かと思われるかもわかりませんが、地上のあらゆる楽器の中でとくにギターを弾いている人間はプロ・アマ問わず音符の読み書きが出来ない人が多いのが現状です。この事を逆に考えれば必ずしも楽譜が読めなくても、または書けなくてもプロとしても(楽器は関係なく)やっていけるのですが、ジャンルによって、例えばクラシックの場合は音符が読めなければかなり苦しいと思います。(仕事のほとんどを楽譜を見て演奏するスタジオ・ミュージシャンはもちろん絶対必要です。あと音楽講師等教える仕事も当たり前だのクラッカーだ、です)
上の3人の中ではジョン・レンボーンは楽譜の読み書きの実力はかなり高く、オープン・チューニング、変則チューニングに対しても初見演奏が出来る程の能力の持ち主です。母親がピアノを弾いていた事や10代の頃に短期間においてクラシック・ギターのレッスンを受けていた事で身についたと思われるのと「ギターを弾く人は誰でも楽譜の読み書きは出来ると思っていた」と昔のインタビュー記事で語っているように楽譜の読み書きは早くから出来ていました。そして30歳を超えてから母国イギリスの音楽大学を受験し、卒業時には成績が優秀なためそのまま大学で講師として引き止められる程に音楽学そのものを非常に精通し、オーケストレーション、編曲、古楽、クラシック、声楽、ジャズ、欧米のトラッド、フォーク/ブルース等の歴史を大学で教えているのでそのレベルの高さがよくわかります。
バート・ヤンシュは自分の曲をあまり楽譜には残していないようです。ジャズやブルース等と同じくいつも同じように演奏をしないのと2人に比べてインスト・チューンが少ないのでそれほど必要性がなかったからだと思われます。何十年か前にはギターにピック・アップを付けて弾いた弦の音をパソコンで自動的に音符に変換するソフトを使用していましたが(自分で楽譜を書けないからではなく便利だから、といった理由で)使い物にならずにすぐにやめたようです(2013年現在でもこのソフトは開発されていません。倍音を含んだアナログ音をデジタルに変換しそれを5線上に表すには技術的にかなり難しいようです。それにもともと音符の読み書きが出来なければ自動で楽譜化されてもそれを読めないのではあまり意味がないようにも思います。ただし楽譜が読める者にとってはデジタルで採譜されたのを自分で修正していけば書くのに時間的な楽が出来るかもわかりませんが)。
バートはもともとバンジョーでも歌っていました(今では少なくなりましたが50年代頃の英国では”弾き語り”の楽器にバンジョーを使うのが一般的だったようです)。そしてピアノもペンタングルのアルバム「REFLCTION」のジョン・レンボーン作曲「So Clear」ではジョンのギターのバッキングで、それにバートの全曲インスト・ソロ・アルバム「Avocet」でも聴けるので楽譜は問題なく読めていたと思います。
デイビー・グレアムは若い頃から中近東の民族音楽やジャズ・ミュージックを研究するために音楽理論等を独学で会得したように思われます。また後年においてはボサ・ノヴァ、ルネサンス音楽をより深く理解するために表舞台から一時期退きその後演奏はクラシック・ギターとジャズのスタイルに近い奏法に変わっています。そしてもともとデイビーが音楽を広く深く理解し編曲等の勉強を熱心に続けたのはやはり楽譜の理解が出来なくては難しいと思われます。
などと3人の楽譜の読み書きについて書きましたが楽譜の読み書きや音楽理論等を理解出来てもこのような英国を代表する3人のアコースティック・ギタリストの域に達する訳でも、すばらしい音楽が書けるものではないのが凡人のギタリストには辛いところですが。
------広岡祐一/2013/10/18記-----
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