『G線上のアリア』
数ある名曲の中でも究極の美しい旋律を持つバッハの『G線上のアリア』。
もともとドイツのヴァイオリニストのオーギュスト・ウィルヘルミ(1845-1908)がバッハの≪管弦楽組曲第3番≫の第二楽章の一曲であるこの曲をヴァイオリンとピアノのために編曲した時、ヴァイオリンの独奏用に「G線上の」と注釈標題をつけた曲で、クラシックや古楽に馴染みのない方でも聞き覚えのある有名な曲だと思います(ところで“アリア”とはオペラの中でそれまで進行していた劇や出演者の合唱等が一時停滞して、多くは主人公が独りで切実に心情を歌い上げる、言うなれば“見せ場”での歌/音楽の事です)。
先日、何年か振りに大阪フィルハーモニー交響楽団の団員のM先生と会う機会にめぐまれました。この紳士で老齢の音楽家とは数十年前にある劇団の音楽を僕が担当した時にお世話になった方なのですが、この時に「どうして“G線上のアリア”があんなに美しい旋律なのでしょうか?」と漠然と尋ねてしまいました。
先生曰く『繰り返し現れる掛留音(けいりゅうおん)によって生まれる美しさ・・・だと思うよ』と。もちろんこれだけで僕が「なるほど、そういう事だったのですか!」と簡単には到底理解は出来ませんが。
[掛留音]とは例えば、ギターなどのコードで「C」のコード(和音)は「ド・ミ・ソ」の集まりで、このコードが鳴っている時に「ド~レ~ミ~ファ~ソ~」のメロディがあるすれば「レとファ」は「非和声音」と呼びます。
つまり「和声構成音」以外の和音外音が「非和声音」で[掛留音]はその一種で少し特殊な役割を持っています。
ギター等の弾語りのコード進行でよく出て来る「Dsus4(Dサス・フォー)」等で、このコードが現れると次に進むコードはほぼ「sus4」の取れた、この例なら「Dsus4」→「D」に一般的に進みます。
この「sus4」の音が[掛留音]でこの場合は「サスペンデッド4th音」で「長3度音が完全4度音へ変化した音」で「C」の場合はミがファ、「D」ではファ#がソになります。
この流れを…「Dsus4」→「D」を聴くと「D」コードがすごく落ち着いた感覚に聴こえますが、もちろんベースになる音や旋律の上声部以外の旋律にもこの音を使います。
横道にそれましたが、この[掛留音]が繰り返し現れ美しい旋律を醸し出しているのが『G線上のアリア』だそうです。
と言う事なのですが、たったこれだけの事でこの曲の美しさを説明出来るのがなんかスゴイし、逆にこれだけの説明では僕には完全に理解出来ないので、まだまだ勉強せにゃあかん、と身に染みました。
ちなみに初心者用にアレンジしたこの曲のギターソロの譜面があるのですが、やはりサスティーンの問題なのか、今ひとつ美しさが表現出来ないように感じます。
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