2.OMIE WISE/オミー・ウィズ
Bert Jansch:acoustic guitar & vocal
John Renbourn:acoustic guitar
Danny Thompson:double bass
バートのソロでの弾語りにジョンはメロディにオブリガードでのインター・プレイ、そして抑えたダニーのベースという彼らにとって非常にシンプルなスタイルに仕上がっているトラッド・チューンで、出来ればこの編成でのインストも聴きたかった!
このトラッド・チューンは恐らくアメリカ生まれのバラッドかブロードサイド・バラッドでは?と思われます。
タイトルの「オミー・ワイズ」とは、この曲の物語の殺された悲劇の女性の名前で、殺人者はジョン・ルイスと歌詞の中に出てきます。
唄の最初に「さあ、私の話す物語をを聞いてくれ。本当の出来事です…」から始まるのですが、このように歌い手が聴衆を意識した語り手の立場や、登場人物の具体的な名前が出て来るのは比較的新しいバラッドです。
エリザベス朝時代の職業バラッド作家による作品に多くみられ…日本なら江戸時代の瓦版か、現在のタブロイド誌のようにセンセーショナルでゴシップ的な実際に起こった事件、それも殺人事件などを扱っている唄が多くあります。
世間を賑わした殺人事件などの犯人が捕まり処刑される時に、一種の見世物、娯楽のようにその処刑を見ようと人々が集まって来ます。そしてその事件のあらましを歌いやすい歌詞に作りその場で売っていたそうです。メロディは「〇〇〇のメロディにのせて唄って下さい」等の注意書きが添えられ、つまりその頃に流行っていた誰でも知っている歌のメロディで唄って下さい…などです。
アメリカでも有名なこの曲は、フォーク/C&W/ギタリスト&シンガーである大御所のドグ・ワトソンの弾語りでもよく知られていますが、バート・ヤンシュと比較すると歌うメロディはほぼ同じですがコード進行が違います。
AmがKeyなのでドグ・ワトソンはドミナント7thのE7使っていますが、バートはGのコードで歌っています。
この事は、アメリカ人のドグにとってはKeyをAm(イ短調)としていますが、バートはエオリアン・モードとして演奏しているからだと思われます。
もともとバラッドは単旋律(ひとつのメロディ)を楽器の伴奏無しで歌っていたものだと考えられています。
大昔当時はみんなが集まれば誰でも唄って聴かすことの出来た娯楽であり、もちろん音符などには殆ど残されていません(楽器を所有し音符の読書きが出来た人は一部の上流階級です)。
そしてその頃のその時代の音楽はモード的な要素の音階か、民族音楽にみられる5音階が一般的でしたのでギターのようにコードを鳴らして歌う事には1950年代前後頃まで頭の古い人間には抵抗があった事も事実です。
そういった事はともかくこの「オミー・ワイズ」は僕の大好きな曲です。
以前にペンタングルのコピーをしていた同じ編成のバンドを組んでいた時にはこの曲のバートのパートを受け持っていました。本来ペンタングルを演奏する時の僕はジョン・レンボーンのパートだったのですが、この曲だけは自分で歌いたかったもんで。
今これを書いていて、ジョン・レンボーンがステファン・グロスマンと初来日した1978年に彼らが宿泊していた大阪のホテルの地下のバーで中川イサトさんの紹介でジョンを囲んで一緒に飲む機会がありました。
その時ジョンが「来年はジャッキーと一緒に日本に来る予定だよ」と教えてくれたので「それなら僕達のバンドでペンタングルの曲を一緒に演奏させて下さい!」とお願いすると「もちろんOK!」と言ってもらったのを思い出しました。
が、しかし後でよく考えてみるとペンタングルのジョンのパートは僕だったのでどうする気なのか俺は?
(to 42)
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