ブルースやブリティッシュ・フォークのフィンガー・ピッキングでのソロ・ギターではそれほど重要ではない楽譜も、クラシック、古楽を演奏する時には必要になります。
しかし中世、ルネサンス音楽やバッハの場合はもともとギターの楽譜は存在しないのですから、もともとのオリジナル楽器に書かれた楽譜をギター譜にアレンジする事になります。
バッハの場合、オルガンやチェロ、チェンバロ、バイオリン(バロック・バイオリン)、リュート等の楽譜をギターで演奏可能なように編曲するわけですから、一般に市販されている楽譜にバッハの曲が載っているのは誰かがオリジナルの楽譜をギター用に編曲した事になります。
では、元の楽譜はどういったものか?
もちろんバッハ本人が書いた手稿があればそれを元にするわけですが、当時のバッハの弟子や息子達、または友人が写譜した手書きの楽譜等も多く残っていますが、当然写し間違いのもあると思います。
とりあえず出版されている楽譜には4種類があります。
①実用譜
②ファクシミリ
③原典譜
④批判版
等と呼ばれていますがその違いは、
①実用譜とは、オリジナル(本人が書いたと思われている楽譜…もちろん当時の筆記用具、インク、楽譜の書かれた紙質等を科学的に調べてのもの)の楽譜を翻案して当該楽器(この場合はギター)の可能性と限界(ギターでは出せない不可能な音域等)を考慮し演奏者に技術的音楽的解決を提供する楽譜の事です。
ただしこれには編集者の意図が反映されるために原譜と編集上の事柄の区別が・・・つまり元の楽譜のどの部分を変えたのかわかりにくい傾向を持ちます。
②ファクシミリとは原譜を写真に撮り、その複製を提供するものです。
楽譜には一切手を加えていないので演奏者が自ら編曲(つまりギター演奏用に)することになりますが、音楽的な知識や技術を持っていなければ非常に困難。それに当時の楽譜にはすでに使われない記号や、現在と同じ記号であっても意味合いが異なるものも多く、最近では殆ど見かけない楽譜です。
③原典譜は、原譜を編集者の干渉を取り入れず当時の楽譜を現在の書き方に変えているものですが、その原譜の信憑正が証明されているものに限ります。
オリジナルの原譜には先に書いたように作曲家本人の手によって書かれたのか、他人の手によって写譜されたものなのかを調べる必要があります。
④批判版とは、種久の資料の学問的な比較を通して作曲者の真の意図を定めようとするものです。
同じ作曲家の他の楽譜と類似点等を比較検討され、またどの解読によって正当性を持つかを見極め決定したものです。
と、なんだか硬い言い回しになりましたが、以上にように大きく分けて4種類の楽譜があります。
(現代ギター2010年7月「J.S.BACH」を参考にしています)
------------広岡祐一/2011年9月11日記-----------------------
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