1970年頃から現在もJohn Renbournのギター・チューンを採譜し続けていると、その独特なギターのスタイルが見えて来ます。
自分の曲を書いている時にも、Johnならここでの繋がりはこのような音を使うだろうな…、等と考えます。もちろん意識的にも無意識でも関係なく。
このJohnやBert Janschの友人でもあり、また2人に影響を与えた孤高のギタリストであるDavy Grahamの場合、Johnのように音の作り方がまだまだ理解出来ません。
1970年代に「どういったギターを弾くのですか?」と聞かれた時に「フィンガー・ピッキング・スタイルです」と答えると「フ、フィンガー…って何です?」とよく言われました。この時代にはアコースティック・ギターもフォーク・ギターと呼ぶのが一般的で“唄がないギターだけの曲”はそれほどまだ認知されていませんでした。
「え~と、つまり指で弾いて、メロディやベース音を同時に弾く、感じ」
「クラシック・ギターと何が違う?」
「・・・ブルースとかラグやジャズぽい曲、トラッド等のジャンルなので・・・。でもクラシックと言うか古楽も弾いています」と言うと「・・・ふ~ん」でした。
ま、このように今でも時々説明しますが、クラシック・ギターも一本のギターで演奏するのが多いのですがジャズにも「ソロ・ギター」が多くあります。
ただジャズ・ギターでのソロ・ギターとアコースティック・ギタリストのソロ・ギターとの違いは、アドリブ・ラインにもアコースティック・ギタリストのフィンガー・ピッキング・スタイルではベースとなるラインも出しているプレイが一般的だと思います。
曲中のアドリブはフィンガー・ピッキング・スタイルであってもジャズの場合はやはりシングル・トーン…昔風に言うと“リード・ギター”…でのプレイが多く、アコースティック・ギターのフィンガー・ピッキング・スタイルではベース・ノートも加えて常にコード感も出している、ように思えます。
ジャズ・ギターのソロの場合、メロディ・ラインは多くの場合テンションとして発音。もちろんこの時はコード感を出すためにルートをベース・ラインとして使用するのでアコースティック・ギターでのFPG(フィンガー・ピッキング・ギター)スタイルとそれほどに変わりはないと感じます。もちろんジャズほどにテンション・コードを使用しないのでジャズ感はそれほど出してはいませんが、よく似たスタイルです。そしてアドリブ・ラインはシングル・トーンでプレイする他にそのフレーズにこれぞジャズ!と感じるモードを多く使用するので、こちらはアコースティック・ギタリストは少ない、と言うよりは殆ど使いません(難しいので使えない?)。
で、
Davy Grahamのギター・スタイルには多くのこのジャズ風のアドリブ・ソロが入っています。これはJohnのスイルには殆ど見当たらないのでDavyの方がジャズ風のアプローチが大きいようです。
もともとレストランで食事をする客のBGMで当時一般的に有名なジャズ、ポップスを多くソロ・ギターにアレンジして演奏、そして彼の弟のドラマーとのユニットでも多く演奏していたのでアドリブ・ラインにもバックではドラムのリズムが流れていたので自然にソロでの演奏時にもこのスタイルを使っているのかと思います。
John Renbourn、Bert JanschもバックにPENTANGLEのドラムスのテリー・コックスやWベースのダニー・トンプソンと演奏する時にはこのスタイルがありますが、ギター一本のソロではまず聴く事はありませんでした。
では、
Davy Grahamのギター・スタイルは、フィンガー・ピッキング・スタイルでジャズ・ギターのようなシングル・ノートでのジャズ的なアプローチを入れるスタイル…と単純に言えないので研究中です。
ブルース、ジャズ、フォーク、ポップス、トラッド、ラグタイム、古楽、インドラーガ、中近東音楽等が渾然一体なっているのがDavyの醸し出すギターですが、そのどの曲を聴いてもDavyのスタイルとわかる個性豊かな音作り。
この人の曲も多く採譜しているのですがJohn程に理解不能です。
これからもまだまだ研究して少しでもその独特なギター・スタイルに迫りたい、と思っているのですがあまりにもスゴ過ぎて近づけません。
当時「英国のブルースの父」と呼ばれているアレクシス・コナーや、やはり鬼才のブルース・ミュージシャンのジョン・メイオールとも一時一緒にバンドを組んでいたDavy Grahamaはその彼独特の音楽的な個性ゆえソロ・ミュージシャンの道を歩んだ。
――なぜ、ギグの回数をもっとこなしたりアルバムを多く出さないのですか?
この質問にDavy曰く、
……練習が僕にとって一番の仕事さ。
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