リュート作品はタブラチュア譜が多く現存しているのと、比較的ギターにアレンジし易いので、内外の多くのクラシック・ギタリスによって演奏されています。
古楽器であるリュート自体も長年の研究により古楽楽器研究家などに復活され、現在では容易に手にする事も出来てリュートの演奏家もいます。それに僕の教室でもリュート作品も課題曲としてレッスンに使っています。
現在、各国固有の民族音楽以外の「音楽」の素は中世のイタリア、ドイツ、フランス周辺から生まれ発展してきたもので、後にはバッハ、モーツアルト、ハイドン、ベートーヴェン等の誰もが知っている多くの音楽家を生み出して来ました。
この音楽の歴史の中でひとつ不思議な事は、英国からはどうして先の彼らに匹敵するような大物の音楽家が生まれなかったのか?です。
ヨーロッパ大陸からはドーバー海峡を隔てた国ですが、もちろん音楽は中世の時代から盛んですが歴史に名を連ねる俗に言う大物の音楽家の名前が見つかりません。
その英国にリュートで一世風靡をした宮廷音楽家/リュート奏者のジョン・ダウランドがいました。
“John Dowland/ジョン・ダウランド”(1563-1626)
エリザベス朝(1558年~1603年)を代表する作曲家/音楽家のひとりであるジョン・ダウランドの作品は当時、現在の言うところの大ヒットしたリュート曲を数多く残しており、英国以外の国々、そしてリュート以外の楽器にも編曲され演奏され大変に人気がありました。
とくに彼の代表作でもある「涙のパヴァーヌ」は現在でも世界中の多くのリュート奏者やギタリストによって演奏されています。
僕の尊敬する音楽史研究科の皆川達夫氏によると、
「・・・とくにジョン・ダウランドはリュート奏者として活躍し、多数のリュート独奏曲、およびリュート伴奏付き歌曲を作曲しています。彼は19世紀のショパンにも似たデリケートな心情の人物であったらしく、その甘美な叙情性にかけて、とくに際立っています。イギリスばかりでなく大陸でも放浪の生活を送り、また信仰をしばしば取り変えると言うような経歴の人物です。おそらくは大変な屈折した精神の持主であったでしょう・・・」
ずいぶんとアナーキーな人だったようです。
(ジョン・ダウランドの参考CD)
*ダウランド・リュート歌曲全曲集(POCL3178~82)
*アルフレッド・デラー/リュート歌曲集(KKCC34)
その他多数のCDが出ています。
--------- 広岡祐一 -----------------------
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